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2023 — — 0→1 / Global / Consumer

集中支援アプリ「gogh」— 数名のプロトタイプ検証からグローバル300万DLの主力事業へ

アバターと共に「集中する時間」を過ごすプロダクトで、0→1の価値検証からPMF、グローバル展開までのデザインを担当しました。体験設計とUIデザインの責任者として、30名規模の主力事業への成長を体験の面から支えています。

Period
2023.09 — 現在
Team
立ち上げ期 4名 → 現在 30名規模
Company
株式会社ambr
Role
Product Designer / 体験設計・UIデザイン責任者
集中支援アプリ「gogh」— 数名のプロトタイプ検証からグローバル300万DLの主力事業へ

300万

グローバルDL数

リリース1年で150万DL

30万本

累計売上本数

有料アイテム含む

30名

事業組織規模

4名のプロトタイプ検証から

TL;DR

課題
エンタメアプリとして初期リリースしたgoghは、価値がクリエイター層にしか届かず、スケールする手応えを掴めずにいた。
役割と打ち手
体験設計・UIデザインの責任者として、ユーザーリサーチと構造分析を起点に「アバターと一緒に集中する」への再定義を主導。最小のプロトタイプで検証を回す進め方をチームに定着させた。
成果
バイラルを伴うPMFを経て、グローバル300万DL・売上30万本へ。4名のプロトタイプ検証から30名規模の主力事業に成長した。

gogh モバイルアプリのUI

課題 — 「集中」という答えは最初からあったわけではない

goghは現在「アバターと共に集中する時間を過ごす」プロダクトとして知られていますが、初期リリースは「ルームとアバターがつくれる」エンタメアプリでした。「まずツールとして出す」という原則に沿った価値提案はクリエイター層には深く届いたものの、届く確率が低く、スケールする手応えを掴めずにいました。数名のチームに必要だったのは機能追加ではなく、届けるべき価値そのものを問い直すリサーチだと考えました。

リサーチ — 仮ペルソナの生活に近づいて理解する

初期リリースの反応から、仮ペルソナを「推し活をする中高生」と置きました。中学・高校でのXRイベント開催を通じて協力関係を築き、都内・京都の中高生に継続的にヒアリングを行いました。

転換点は、ふたつの発見が重なったことでした。ヒアリングで得た「誰かと一緒だと作業に集中できる」というインサイトと、制作ツールとして提供していたgoghが「好きな部屋で、エモい構図の写真が撮れるアプリ」として使われていたという行動事実です。両者が交わる「アバターと一緒に作業する」という価値へ、プロダクトを再定義しました。

この再定義は、同時に捨てる判断でもありました。クリエイター層に深く刺さっていた制作価値を主軸から外し、「広く届き得る価値」に賭ける——このトレードオフを観察事実とセットでチームに提示し、合意を取ってから進めました。ピボットを完遂できた一因は、初期リリースの機能群を小さく保っていたことにあります。

ユーザーリサーチの様子

構造分析 — 「空間」ではなく「目的」を提供する

このピボットの判断は、観察と並行して進めた既存メタバースの構造分析にも基づいています。空間型サービスには、その空間に行く動機が薄く、アクセスまでの心理的ハードルが高いという共通の課題があります。誰がいるかわからない空間には入りにくく、入っても目的がなければ滞在は続きません。一方でRobloxやZEPETOは「ゲームをする」という明確な動機で多くの訪問者を集めていますが、深い関係性の構築には必ずしもつながっていません。

ここからチームで導いた設計原則が「場に目的を持たせる」ことでした。goghが提供すべきは「部屋という空間」ではなく、「集中する」という目的に空間とキャラクターの気配が寄り添う体験です。空間は目的に従属する——この整理によって、「アバターと一緒に作業する」への再定義に確信を持つことができました。

PMF — ユーザー自身の言葉でプロダクトが語られ始めた

再定義した体験は、初のバイラルという形で反応がありました。Twitterでは1万いいねを超えて拡散し、TikTokでも2万いいねの投稿が生まれました。特に印象的だったのは、#goghFA や #gogh民と繋がりたい といったハッシュタグがユーザー自身から自然発生したことです。LINEやDiscordといった観測できない場でも紹介が連鎖し、運営の発信量を超えてユーザーが主体的にプロダクトを語る状態が生まれました。この「ユーザーの言葉で広がる」手応えを、チームはPMFのシグナルとして受け止めました。

ユーザー属性の分布

グロース — 「集中できる」から「続けたくなる」体験へ

PMF後は、モバイル・Steamの両プラットフォームで、継続と収益を支える体験設計へ軸足を移しました。

  • 収益化の体験設計:アバターのセット購入・課金フロー・シーズンパスなどを、単発の画面ではなく「ユーザーが課金に至るまでのフロー全体」として設計しました。PDチームで複数の売り方を比較検討し、プロトタイプで課金仕様・販売方法を検証したうえで、法務・運用と連携して課金まわりの懸念を事前に整理しています。エンジニアチームと協働したオンボーディングと課金フローの改善は、ユーザー離脱率の低減に寄与しました
  • Steam版の体験最適化:デスクトップに最適化した体験設計で、新たなユーザー層に届けることができました。お絵かきチャット・DLC・ルームシェア・Watch Partyなど、没入感を保ちながら使いやすい機能UIを継続的に設計しています
  • リサーチの継続:ユーザーによるgoghの配信を視聴し、実際のプレイヤーがどこで詰まり、どこで喜ぶかを観察しています。国内外の類似アプリの分析と合わせ、ニーズ起点のUI改善につなげています
  • LLMによるプロセスの高速化:Vibe Codingを取り入れたプロトタイピングで、静的なモックでは伝わりにくいインタラクションやアニメーションを動く形で素早く共有しています。デザインFIXまでの手戻りを減らし、試作〜検証のサイクルを短縮しました

LLMを活用したプロトタイピングの様子

  • デザインシステムのドキュメント化:Claude Code + Figma MCPを用いて、デザインシステムをLLMが判断の根拠として参照できる形にドキュメント化し、デザインハーネス構築の基盤を整えました

gogh design system wiki

LLMの判断の根拠となるデザインシステムのドキュメント

AIによる業務効率化・施策の精度向上

デザインの制作だけでなく、その前後にある調査・仕様検討・運用のプロセスにもAIを取り入れ、少人数のチームでも判断の質とスピードを両立できる進め方を整えてきました。

土台となるのは、デザインシステムとデザイントークンの整備です。カラー・タイポグラフィ・コンポーネントを体系化したうえで、その更新をLLMで反映できる形にしておくことで、デザインの一貫性を保ちながら仕様変更への追従コストを下げています。また課金機能のように考慮すべき論点が多い領域では、仕様検討の段階でAIを併走させ、エッジケースや例外フロー、法務・運用上の論点を洗い出すことで、リリース前の考慮漏れを防いでいます。

事業インパクト

リリース後1年でグローバル150万DLに到達し、現在は300万DL・売上30万本を超えています。数名のプロトタイプ検証から始まった事業は、PMFを経て30名規模の主力事業へと成長しました。

この数字はチーム全体の成果です。そのうえで、私のデザイン判断が直接動かした部分を挙げると次のようになります。

  • 価値の再定義(ピボット)の起点:リサーチの設計・実施から「集中」への再定義の提案までを主導しました。現在の事業はこの再定義の延長線上にあります
  • 課金・オンボーディングの改善:エンジニアチームと協働したオンボーディングと課金フローの改善が、ユーザー離脱率の低減に寄与しました。課金体験はセット購入・シーズンパスを含むフロー全体を設計しています
  • 検証サイクルの短縮:プロトタイプを議論の共通言語にする進め方とVibe Codingの導入で、デザインFIXまでの手戻りを削減し、試作〜検証のサイクルを短縮しました。この進め方は立ち上げ期のチームの標準になっています

プロダクトの設計思想はnote記事「200万DLを突破した作業集中プロダクト『gogh』のデザイン思想」として公開し、社外のデザインコミュニティでも参照いただいています。

学び

  • PMF以前の探索期に有効だったのは、ユーザーの「言葉」と「行動」を重ねて観察することでした。ヒアリングで得たインサイトと、想定外の使われ方という行動事実が交わる場所に、プロダクトの価値が現れていたと考えています
  • MVPで始める利点は、価値検証が速くなることだけではありません。機能群を最小に保つことで、後の方向転換が身軽になります。ピボットを完遂できた一因は、初期リリースを小さく保っていたことにありました
  • 立ち上げ期の意思決定スピードを支えたのは、プロトタイプを「議論の共通言語」にしたことでした。仕様書ではなく触れるものを起点にすることで、職種を越えた判断が速くなりました
  • グローバル展開では、ローカライズは翻訳ではなく、「その文化圏での集中の意味」を捉え直すことだと学びました。この視点は、以後のプロジェクトでも大切にしています

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