2023 — Org Design / DesignOps / Advocacy
大企業へのデザイン文化の実装
デザイナーがほとんど在籍しない大手損保会社で、ツール・プロセス・コミュニティ・発信の4方向から組織のデザイン理解の向上に取り組みました。Figma導入やHCD-Net法人加入を提言・実現し、ノンデザイナー60名超が参加するコミュニティへ育てました。
- Period
- 2021.11 — 2023.08
- Team
- インハウスデザイナー 2 / 社内有志コミュニティ
- Company
- 東京海上日動システムズ(デジタルイノベーション開発部 兼 戦略企画部)
- Role
- インハウスデザイナー(デザイン文化・基盤整備の主導)
60名+
社内デザインコミュニティ参加者
参加者はすべてノンデザイナー
1,000人+
連載した社内報の日次閲覧規模
デザイン記事を月1回発信
2つ
組織への制度的な提言を実現
Figma全社導入 / HCD-Net法人加入
TL;DR
- 課題
- 数千名規模の損保グループでデザインは「最後に見た目を整える工程」と認識され、ツール・HCDの知見・デザインに触れる接点のすべてが不足していた。
- 役割と打ち手
- 担当プロダクトの傍ら、ツール(Figma導入)・制度(HCD-Net法人加入)・コミュニティ・発信の4方向から、提言を稟議に通し制度に変える形で文化づくりを主導した。
- 成果
- Figma導入とHCD-Net法人加入を実現し、ノンデザイナー60名超のコミュニティが定着。離任後もデザインプロセスが回る基盤が残った。
課題 — 「デザイン=装飾」という認識の組織で、どう文化をつくるか
数千名規模の損保グループにおいて、デザイナーは私を含めごく少数でした。デザインは「最後に見た目を整える工程」と認識されており、構造的な課題がいくつも残されていました。
- デザインツールが古く、デザイナーとエンジニアの情報共有コストが高い
- 人間中心設計(HCD)の知見が組織になく、要件定義が作り手都合になりやすい
- 部内ポータルは情報が属人化し、新人の立ち上がりを暗黙知が妨げている
- そもそもデザインに触れる機会が社内に少なく、関心を持つ入口がない
1人のデザイン実務者として画面を作るだけでは、この構造は変わらないと考えました。担当プロダクトの傍らで、組織にデザイン文化を根づかせることを自分の役割のひとつとして設定しました。
プロセス — ツール・制度・コミュニティ・発信の4方向から取り組む
文化は号令だけでは根づきません。「仕事の道具」「会社の制度」「人のつながり」「日々の接触」の4つのレイヤーで、具体的な取り組みを積み重ねました。
- ツール — Figmaの社内導入:従来ツールによる共有コストの課題を整理し、Figma導入を提案しました。Figma社のCSとやり取りしながら導入を進め、デザイナーとエンジニアの協業フローを改善しました
- 制度 — HCD-Netへの法人加入:人間中心設計の知見を組織として持つ必要性を提言し、賛助会員としての加入を実現しました。以後、HCDプロセスの社内普及活動の足場になっています
- コミュニティ — 社内デザインコミュニティの運営:デザインに興味のあるノンデザイナーが学べる場を立ち上げ、60名超の方に参加いただきました。UIデザインを学びたい若手向けにデザインWikiを整備し、学習の道標を用意しました
- 発信 — 社内報での連載:毎日1,000人以上が閲覧する社内ページで、デザインに関する記事を月1回発信し、日常的にデザインに触れる接点をつくり続けました
最終デザイン — 属人化したポータルを、組織の入口につくり変える
象徴的なアウトプットのひとつが、部内ポータルのリデザインです。長年の運用で情報が属人化し、どこに何があるかを説明しづらい状態になっていました。
- ページトップにミッション・ビジョンを掲載し、組織の目的と方向性を共有しやすくしました
- 新人向けの環境構築手順を1ページに集約し、暗黙知を可視化しました
- 情報の分類を「更新する人」ではなく「探す人」の目線で再構成しました
リデザイン後は部内メンバーに加えて、後から入社した新卒・中途の方からも「立ち上がりが楽になった」という声をいただきました。
事業インパクト
Figma導入によりデザイナー・エンジニア間のコミュニケーションコストが下がり、私の離任後もデザインプロセスが回る基盤として定着しています。HCD-Net加入とコミュニティ運営を通じて、デザイナーが不在の部署でも「まずユーザーに聞く」という語彙と行動が生まれ、デザインが特定個人のスキルから組織の能力へと少しずつ変わり始めました。
学び
- 文化づくりの実体は、提言を制度に変える地道な調整でした。Figma導入もHCD-Net加入も、価値の言語化から稟議を通す設計までを含めてデザインの仕事だと捉えています
- 発信は、続けること自体が信頼につながります。月1回の連載を欠かさなかったことが、コミュニティへの人の流入を支えました
- 大きな組織では、個々のアウトプットと同じくらい良い入口(ポータル・Wiki・道標)が多くの人の行動を変えます。少人数のデザイナーの取り組みが最も活きる場所だったと感じています