2021 — 0→1 / Consumer / Research
ふりかえり習慣化アプリ「Stockr」— 0→1の企画からグロースまで、一気通貫のプロダクトデザイン
「高品質な学びの仕組みをつくる」という自社ミッションから生まれた経験学習支援アプリに、企画段階からリードデザイナーとして参画しました。ユーザーインタビュー・体験設計・課金機能からLP・ASO・ステップメールまでデザイン領域を広く担当し、開発チームとともに7.5万DLまで育てました。
- Period
- 2019.11 — 2021.10
- Team
- 自社プロダクトチーム(Designer 1)
- Company
- 株式会社ビルディット
- Role
- Lead Product Designer(リサーチ・体験設計・UI・グロース)
7.5万
累計DL数
デザイナー1名体制のチームで
4.7 / 5
ストアレビュー
リリース後も継続的に改善
50%
ステップメール平均開封率
自ら設計・運用した施策
TL;DR
- 課題
- 経験学習という学術的なプロセスを、生活者が毎日続けられるアプリに翻訳する必要があった。
- 役割と打ち手
- 唯一のデザイナーとしてリサーチ・体験設計・UI・グロース施策までを一気通貫で担当。ユーザーインタビューと広告A/Bテストでペルソナを見直し、機能とマーケティング双方の判断軸をつくった。
- 成果
- 累計7.5万DL・ストアレビュー4.7。インサイト起点の機能が体験の核になり、レポート課金でマネタイズを立ち上げた。ステップメールは平均開封率50%。
課題 — 「経験学習」という抽象概念を、毎日開くアプリにする
Stockrは、日々の気づきを「ストック」し、ふりかえることで自身の思考を促進するアプリです。「高品質な学びの仕組みをつくる」という自社ミッションを実現する新規事業として企画されました。
難しさは、経験学習という学術的なプロセスを、生活者が続けられる体験に翻訳することにありました。理論をそのままUIにすれば堅苦しくなり、簡略化しすぎれば単なるメモアプリと区別がつきません。私は企画段階からリードデザイナーとして参加し、ストーリーマッピングとユーザーインタビューで体験を洗い出すところから始めました。
リサーチ — インタビューがペルソナを書き換えた
リリース後、ペルソナ像の見直しとインサイトの発見を目的に、ユーザーインタビューを設計・実施しました。
- 募集から設計:応募フォームを作成し、SNSで被験者を募集しました。事前にスケジュールと個人情報の取り扱いを明示し、安心して参加いただける段取りを整えました
- 半構造化インタビュー:潜在ニーズを掘り下げるためのヒアリングシートを準備しつつ、当日はシートに固執せず対話の流れを優先しました。記録係との目線合わせも事前に行いました
- 広告のA/Bテストも検証材料に:Instagram/Twitter広告のCTA比較から、想定外の層(生活改善に関心の高い女性層)の反応が最も高いことがわかりました
結果、ペルソナは「日々が漠然としておりメモの習慣がない人」から、「生活の改善に関心があり、良いメモツールを模索している人」へと見直されました。この見直しが、以後の機能・マーケティング施策の判断軸になりました。
最終デザイン — インサイトを機能に変換する
トピック検索:「同じテーマのストックを横断的にふりかえりたい」というインタビュー由来のニーズに対し、ハッシュタグの乱立を避けるため、関心キーワードをあらかじめ5つまで「トピック」として登録する設計にしました。トピックは投稿フォーム下部にも表示され、タップで自動入力されます。「何を書けばいいか」が明確になることで、気づきが生まれる機会そのものを後押しする狙いです。
レポート(プレミアム機能):ペルソナが向上心が高く自己投資に前向きな層だと特定できたことから、活用度を可視化するレポート機能をマネタイズの第一歩に設定しました。課金導線からグラフの見せ方、更新タイミングまでを一連で設計しました。
デザイン基盤:属人化を避けるため、デザインガイドラインとデザイン意図を明文化しました。FlutterがMaterial Designを標準サポートすることを踏まえ、iOS/Androidのデザインを極力共通化する方針を定めました。機能を伝えるSVGイラストも、トンマナの検討から制作を担当しました。

グロース — デザイナーがマーケティングの実務まで担当する
- LPの全面リニューアル:インタビュー分析から「投稿より、ふりかえりこそが本質価値」と捉え直し、キャッチコピーとヒーローエリアを刷新しました。STUDIOで構築し、CMSでキャンペーン別にページを出し分けて媒体ごとの流入を計測できるようにしました
- ステップメール:インストール直後のモチベーションが高い3日間に価値を伝える設計とし、スパム感のないデザイン・容量・送信タイミングを調整しました。結果として平均開封率50%、最終日までの購読解除は1%未満という水準になりました
- ASO:CTRを計測しながら、ストアの説明文とスクリーンショットを継続的に改善しました
事業インパクト
リリース後も改善を重ね、累計7.5万DLを突破しました。デザイナー1名体制のプロダクトとして、私が直接動かした部分は明確です。
- ペルソナの見直し:自ら設計・実施したインタビューと広告A/Bテストで、機能・マーケティング双方の判断軸を提供しました。トピック検索・レポートなどの中核機能は、この見直しから導かれています
- グロース施策の成果:設計・運用したステップメールは平均開封率50%を維持し、LPリニューアルとASO改善は媒体別の計測に基づいて継続的に回しました
- マネタイズの立ち上げ:レポート機能の課金導線からグラフの見せ方までを一連で設計し、プレミアム課金の第一歩を形にしました
学び
- 0→1のフェーズにおけるデザイナーの価値は画面の枚数ではなく、リサーチで意思決定の前提を見直すことにあると学びました。ペルソナの見直しが、チームの判断のぶれを防ぎました
- LP・広告・メール・ASOまで実務として運用したことで、デザインとグロースを同じ仮説検証のループとして回すことができました。職域を区切らないことが、小さなチームの強みになると感じています
- デザイナーが1人の体制だからこそ、ガイドラインとデザイン意図の明文化に投資し、判断を誰でも引き継げる状態をつくりました。属人化の防止は、未来のチームへの最初の貢献になると考えています